銀色ナイフ

今の自分以外の、自分よりも苦しい立場におかれている人を、全然違うものみたいに思える人は、のんきな人だ。危機管理の出来ていない人だ。そういう人は、まさか、自分に限ってと、思っているのだろう。だから、ひとごとなのだろう。怖いのだろう。怖いから、見たくないのだろう。

銀色ナイフ (角川文庫)

銀色ナイフ (角川文庫)

銀色夏生さんのエッセイ。

書籍というより、この人の話を直接聞いているみたいな文章。そして、テーマが細かい。

「ひとりひとりに、それぞれの別の世界がある」というのは、「世界は同じだけど、その中から自分の好きなものだけを選択的に見ている」と同じだ。嫌なことだらけ、って言ってる人は、その人自身が嫌な人なんだろう。

ああそういうことか、となんか嫌なことだらけの自分の日常は自らに起因しているらしかった。なんとも思わない物、事は通過出来るのにわざわざ嫌いなものを選び取って頭に印象つけて落ち込む、本当にどうしようもない奴。

人はつねに謙虚でいなくてはね。特にいろんなことがよくわからないうちは。純だから、一生懸命だからいいってものじゃない。純粋さが暑苦しいこともあるのです。

なるべくそう心がけてはいるが、他人に求めていいものなのかどうか…。

見知らぬ人に親切にすることは簡単だろう。難しいのは、嫌いな人にやさしくすることだ。

それは出来ない。もしやさしく出来たら、本当は嫌いじゃないんじゃないかって思ってしまうほど難しい。例えば、自分を殺そうとした人間を助けるとか、映画アニメの話であり得ない。嫌いな奴と普通に接するだけでも体力いるのに、ましてや何でやさしくできようか。