困ってるひと

「救世主」は、どこにもいない 。ひとを、誰かを救えるひとなど、存在しないんだ。わたしを助けられるのは、わたししかいないのだと、友人をとことん疲弊させてから、大事なものを失ってから、やっと気がついた。

困ってるひと (ポプラ文庫)

困ってるひと (ポプラ文庫)

大野更紗さんの難病との戦い(?)を綴ったエッセイなのかな。文中では闘病記ではないと言ってるが、確かに病気との闘いというより、国の制度とか、特定疾患の申請、診療報酬、身体障害者手帳の申請など聞きなれない敵との戦いみたいなものが繰り広げられていた。入院生活においても生活物資は必要なわけで、さらに役所に申請とか行きたくても大野さんは自由に移動出来ない。だが、大野さんには素晴らしい友人がたくさんいて、みんな色々してくれる。必要なものは買ってきてくれるし、欲しい書類はとってきてくれる。だけども、ずっとそんなんが続くとみんなの心の負担になってきて、関係が切れてしまった。

家族にも、友人にも、病院にも、ソーシャルワーカーさんにも、これ以上頼れない。他人にとって、わたしは「迷惑」をかける存在でしかないのだ。「迷惑」そのものなのだ。

このエッセイには、人に頼る頼られるの関係性は想像以上に複雑なんだな、と思わされた。なんだろう、その人を思う気持ちの度合いとかで違うのはもちろんだろう。ただの友達、知人、親戚と兄弟、夫婦、親とで相手にどこまでの事をしてやれるかに差が出てしまうのは当たり前、それは解ってるけど、そんなこといつも考えてたら寂しくてしょうがない。一生懸命忘れようとする。だってちょっと挨拶するだけの人、職場の仲のいい同僚、仲良くなりたいと願えば願うほど“他人”という概念は必要なくなるから。

でも身の回りの人を仕分けするのは、残酷にも不幸なことが起きた時で、当人は二重に悲しむことになる。

誰にも、頼ってはならない。誰にも、話してはならない。誰にも。

わたしの心は凍った。